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【連載 統計解析力アップ講座】
演習;実験計画法とタグチメソッド(6)
  第5回演習問題の解答と課題
上田データマイニング塾
上田 太一郎
 
今回は演習問題5の解答をいたします。
問題は以下のようでした。
次のような特性値データを考えます。
図表45 要因と特性値データ
A b
10度 68
67
70
72
20度 68
70
75
71
30度 71
73
75
78
40度 71
69
72
69


(注) データの説明;10度で触媒がaのとき、2回実験をしました。そのときの特性値データは68と67でした。

問1 折れ線グラフを描きなさい
問2 分散分析表を作りなさい
問3 計画行列を作りなさい
問4 回帰分析を実行しなさい


解答

問1 折れ線グラフ

 実験計画法データは折れ線グラフにするのがお勧めです。平均値の2元表の折れ線グラフがおすすめです。
図表46 平均(2回の平均を求めました)
  B1 B2
A1 67.5 71.0
A2 69.0 73.0
A3 72.0 76.5
A4 70.0 70.5

図表47 折れ線グラフ


 2つの要因とも特性値yの増減に効いていそうです。交互作用項は無さそうです。

問2 分散分析表を作成します。Excelの分析ツールを使用します。

図表48 分散分析表
分散分析表
変動要因 変動 自由度 分散 観測された分散比 P-値 F 境界値
温度 56.1875 3 18.72917 5.875817 0.02023 4.066181
触媒 39.0625 1 39.0625 12.2549 0.008071 5.317655
交互作用 9.6875 3 3.229167 1.013072 0.436005 4.066181
繰り返し誤差 25.5 8 3.1875  
 
合計 130.4375 15  


 分散の円グラフを描いてみましょう。

図表49 分散の円グラフ

 図表48、49から温度、触媒ともに有意であることがわかります。温度の危険率は2%、触媒の危険率は0.8%。交互作用は危険率43.6%ですので有意ではありません。
 ここで、交互作用という言葉が出てきました。交互作用とは何でしょう。


コラム 主効果と交互作用について

要因A,Bを考えます。
   A,B   主効果
   A×B   交互作用
交互作用なし・・・加法性がある



交互作用あり・・・加法性がない






 交互作用項は繰返し数が2以上の実験をすると得られます。主効果AとBの交互作用項A×Bを一つの要因として分散分析表を作成するのです(図表48)。

 円グラフからも触媒と温度が効いていることが確認できます。交互作用項は効いていません。

 
問3 計画行列

 計画行列は次のようになります。
図表50 計画行列
No. 温度 触媒 データy
1 10度 a 68
2 10度 a 67
3 20度 a 68
4 20度 a 70
5 30度 a 71
6 30度 a 73
7 40度 a 71
8 40度 a 69
9 10度 b 70
10 10度 b 72
11 20度 b 75
12 20度 b 71
13 30度 b 75
14 30度 b 78
15 40度 b 72
16 40度 b 69

 回帰分析実行用データは以下のようになります。

図表51 回帰分析実行用データ
10度 20度 30度 40度 a B データy
1 0 0 0 1 0 68
1 0 0 0 1 0 67
0 1 0 0 1 0 68
0 1 0 0 1 0 70
0 0 1 0 1 0 71
0 0 1 0 1 0 73
0 0 0 1 1 0 71
0 0 0 1 1 0 69
1 0 0 0 0 1 70
1 0 0 0 0 1 72
0 1 0 0 0 1 75
0 1 0 0 0 1 71
0 0 1 0 0 1 75
0 0 1 0 0 1 78
0 0 0 1 0 1 72
0 0 0 1 0 1 69

 
問4 回帰分析を実行

 10度とbを削除して回帰分析を実行します。

 実行結果は次のようになりました。

図表52 回帰分析実行結果
概要
回帰統計
重相関 R 0.855
重決定 R2 0.730
補正 R2 0.632
標準誤差 1.789
観測数 16

分散分析表
  自由度 変動 分散 観測された分散比 有意F
回帰 4 95.25 23.8125 7.44405 0.003722
残差 11 35.1875 3.198864    
合計 15 130.4375      

  係数 標準誤差 t P−値
切片 70.8 0.999822 70.82508 5.52E-16
 20度 1.8 1.264686 1.383742 0.193872
 30度 5.0 1.264686 3.953549 0.002259
 40度 1.0 1.264686 0.79071 0.445827
 a −3.1 0.894268 −3.49448 0.005019

 図表52から式は、次のようになります。

    0.0(10度)   −3.1(a)
y=70.8 1.8(20度)  0.0(b)
    5.0(30度)    
    1.0(40度)    

 最適水準は、30度、bで、このときyは75.8となります。

●確認実験のすすめ

 果たして、30度、bのときyが75.8くらいになるか、必ず確認実験をすることが肝要です。

 次回からは問題と解答と1回読切り完結型といたします。


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