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2013.11【特集記事】

今がチャンス! 技術士受験
〜改正2年目の試験攻略法はこれだ!〜

第1章 新試験でどこが変わった?
〜技術士新試験の改正のポイントと対応〜


 

1−1.技術士制度のあらまし

技術士は、およそ半世紀前に、米国のコンサルティングエンジニアおよびプロフェッショナルエンジニアの制度を倣って、コンサルティングエンジニアの制度を定着させるために生まれたものです。
当初民間資格としてスタートし、技術士法の制定をめざした積極的な活動が行われ、紆余曲折を経て1957年、国会の審議を通過し、科学技術庁を所管とする技術士制度が発足したわけです。
図
1958年7月、第1回目の技術士試験が行われ、同年11月、技術士法に基づく(社)日本技術士会が発足しました。
1983年には技術士補制度が発足し、技術士となるのに必要な技能を修習するため、技術士補として技術士業務を補助することになりました。
1998年に、APECエンジニアの枠組み作りがスタートし、2000年にAPECエンジニア登録が開始されました。この動きに伴い、2000年4月、技術士法が改正され、技術士第二次試験は技術士第一次試験の合格者(及びそれと同等と認められる者)のみが受験できるようになりました。技術士第一次試験は技術士第二次試験のパスポートというわけです。そして、2007年から第二次試験の試験方法が変わり、さらに2013年度に再度、技術士試験の見直しが行われ、新試験が実施されました。

1−2.技術士第一次試験の試験方法改正と実施概要

2013(平成25)年度から、第一次試験・第二次試験ともに試験方法が改正されました。
第一次試験における主な改正ポイントは、以下のとおりです。

  1. 共通科目が廃止となり、基礎科目と統合される。これにより、基礎科目は従来の5分野各5問計25問出題が、5分野各6問計30問出題となる(解答数は5分野各3問計15問と今までと変わらない)。
  2. 基礎科目の第5群「技術連関」が「環境・エネルギー・技術に関するもの」という名称になり、第5群の出題範囲であった品質管理が、第1群「設計・計画に関するもの」で出題されるようになる。
  3. JABEE認定学士過程に加えて、JABEE認定修士課程も第一次試験の免除の対象とする。
「平成25年度技術士第一次試験実施大綱」(平成24年12月25日発表)では以下のように定められました(アンダーライン部は編集部によります。改正点に関わる部分です)。

1)技術士第一次試験の実施について

(1) 技術士第一次試験は、機械部門から原子力・放射線部門まで20の技術部門ごとに実施し、技術士となるのに必要な科学技術全般にわたる基礎的学識及び技術士法第四章の規定の遵守に関する適性並びに技術士補となるのに必要な技術部門についての専門的学識を有するか否かを判定し得るよう実施する。

(2) 試験は、基礎科目、適性科目及び専門科目の3科目について行う。
出題に当たって、基礎科目については科学技術全般にわたる基礎知識(設計・計画に関するもの、情報・論理に関するもの、解析に関するもの、材料・化学・バイオに関するもの、環境・エネルギー・技術に関するもの)について、適性科目については技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性について、専門科目については技術士補として必要な当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識について問うよう配慮する。
基礎科目及び専門科目の試験の程度は、4年制大学の自然科学系学部の専門教育程度とする。

(3) 基礎科目、適性科目及び専門科目を通して、問題作成、採点、合否判定等に関する基本的な方針や考え方を統一するよう配慮する。
なお、専門科目の問題作成に当たっては、教育課程におけるカリキュラムの推移に配慮するものとする。

2)技術士第一次試験の試験方法

(1) 試験の方法
  1. 試験は筆記により行い、全科目択一式とする。
  2. 試験の問題の種類及び解答時間は、次の通りとする。((2)の配点含む)

    問題の種類 解答時間 配 点
    I 基礎科目
      科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題
    1時間 15点満点
    II 適性科目
      技術士法第四章の規定の遵守に関する適性を問う問題
    1時間 15点満点
    III 専門科目
      当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題
    2時間 50点満点

  3. 受験者が解答するに当たっては、電子式卓上計算機(四則演算、平方根、百分率及び数値メモリのみ有するものに限る。)等の使用は認めることができるが、ノート、書籍類等の使用は禁止する。

1−3.技術士第二次試験の試験方法改正と実施概要

第二次試験における主な改正ポイントは、以下のとおりです。

  1. 筆記試験の必須科目を択一式とする。27年度試験から、択一式で合否決定基準に満たない者については、記述式試験の採点を行わない。
  2. 従来の選択科目(「専門知識及び応用能力」)については、解答数の2倍程度を出題数の目安とする。選択科目に「課題解決能力」を問う記述式試験を新設する。出題する課題は2問程度とし、普遍的な課題からも出題する。
  3. 24年度までの技術的体験論文は廃止する。受験申込み時に提出する業務経歴票について、技術的体験をより詳細に記載できる形式とする。
  4. 口頭試験では、経歴の確認、応用能力及び課題解決能力、技術者倫理、技術士制度の認識(総合技術監理部門は、当該部門に求められる専門知識等)について問うこととする。技術者倫理については、実務を踏まえた試問を重視する。試験時間は20分程度を基本とし、必要がある場合は10分程度延長することを可能とする。
第二次試験は改正点が多いので、下記に筆記試験の比較表を示します。

<第二次試験筆記試験>(総合技術監理部門を除く技術部門)
  改正前(〜平成24年度) 改正後(平成25年度)
試験科目 問題の種類 試験方法 試験
時間
配点 問題の種類 試験方法 試験
時間
配点
必須科目 「技術部門」全般に
わたる論理的考察力
と課題解決能力
記述式
600字詰用紙
3枚以内
2時間
30分
50点 「技術部門」全般に
わたる専門知識
択一式
20問出題
15問解答
1時間
30分
30点
選択科目 「選択科目」に関する
専門知識と応用能力
記述式
600字詰用紙
6枚以内
3時間
30分
50点 「選択科目」に関する
専門知識と応用能力
記述式
600字詰用紙
4枚以内
2時間 80点
(40点)
(40点)
選択科目
(新設)
  「選択科目」に関する
課題解決能力
記述式
600字詰用紙
3枚以内
2時間
筆記試験
合格者
技術的体験論文の提出 廃止(受験申込み時に提出する業務経歴票を見直し)
択一式試験の成績が合否決定基準に満たない者については、記述式試験の採点を行わない
(平成27年度試験から)。



「平成25年度技術士第二次試験実施大綱」(平成25年12月25日発表)では以下のように定められました(アンダーライン部は編集部によります。改正点に関わる部分です)。

1)技術士第二次試験の実施について

(1) 技術士第二次試験は、機械部門から総合技術監理部門まで21の技術部門ごとに実施し、当該技術部門の技術士となるのに必要な専門的学識及び高等の専門的応用能力を有するか否かを判定し得るよう実施する。

(2) 試験は、必須科目及び選択科目の2科目について行う。
出題に当たって、総合技術監理部門を除く技術部門における必須科目については当該技術部門の技術士として必要な当該「技術部門」全般にわたる専門知識について、選択科目については当該「選択科目」に関する専門知識及び応用能力並びに課題解決能力について問うよう配慮する。
総合技術監理部門における選択科目については、総合技術監理部門を除く技術部門の必須科目及び選択科目と同様の問題の種類を問うこととし、必須科目については、「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力を問うこととする。
試験の程度は、科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計等の業務に従事した期間が4年等であることを踏まえたものとする。

(3) 筆記試験(必須科目、選択科目)及び口頭試験を通して、問題作成、採点、合否判定等に関する基本的な方針や考え方を統一するよう配慮する。

2)技術士第二次試験の試験方法

(1) 筆記試験
  1. 筆記試験は、必須科目については、総合技術監理部門を除く技術部門においては択一式により行い、総合技術監理部門においては択一式及び記述式により行う。
    選択科目については記述式により行う。
  2. 筆記試験の問題の種類及び解答時間は、次のとおりとする。(省略−前表を参照)
  3. 受験者が解答するに当たっては、電子式卓上計算機(四則演算、平方根、百分率及び数値メモリのみ有するものに限る。)等の使用は認めることができるが、ノート、書籍類等の使用は禁止する。

(2) 口頭試験
  1. 口頭試験は、筆記試験の合格者に対してのみ行う。
  2. 口頭試験は、技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における答案(総合技術監理部門を除く技術部門については、課題解決能力を問うもの)及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、筆記試験の繰り返しにならないように留意する。
  3. 試問事項及び試問時間は、次のとおりとする(総合技術監理部門は省略。(3)の配点含む)。なお、試問時間を10分程度延長することを可能とするなど受験者の能力を十分確認できるよう留意する
(総合技術監理部門を除く技術部門)
試問事項 試問時間 配 点
I 受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容及び応用能力
  (1.経歴及び応用能力)
20分 60点満点
II 技術士としての適格性及び一般的知識
  (2.技術者倫理 3.技術士制度の認識その他)
各20点満点

1−4.過去3年間の第二次試験結果と2014年度試験への対応

過去3年間の第二次試験結果を下表に示します。全体的には15%前後の合格率となっております。平成24年度の合格率が特に低かったのは、総合技術監理部門の合格率が7.3%と大変厳しいものとなったことが要因の1つとなっております。
本誌編集時点(2013年10月上旬)では、まだ2013年度の試験結果が出ておりませんが、おそらくは今までの厳しい合格率に対して配慮し、比較的高めの筆記試験合格率になるのではないかと予想されます。しかし、仮にそうであったとしても、口頭試験で厳しく審査され、結果として例年どおりの厳しい合格率のままになるかもしれません。
それでも、2013年度の試験実施により、今まで推測の域を出なかった新試験の内容がはっきりしましたので、2014年度の技術士試験は、比較的対処しやすくなったといえましょう。
以下に、新技術士試験における対応のポイントをお伝えします。

【技術士第一次試験について】

共通科目は廃止となり基礎科目に統合され、基礎科目は従来の5分野各5問計25問出題が、5分野各6問計30問出題となった。また、25年度試験から合格基準が各科目50%以上と、従来よりも厳しくなったことから、基礎科目と専門科目の対応が特に重要となる。
過去数年分の過年度問題を十分学習し、基礎知識の習得に努めることが大切。さらなるレベルアップのため、従来の共通科目の過去問題にも目を通しておくとよい。

【技術士第二次試験について】

  1. 受験申込書:技術的体験論文が廃止された代わりに、受験申込書の業務経歴票に、技術的体験をより詳細に記載する「業務内容の詳細」が追加された。業務経歴(および筆記試験の答案)を踏まえ口頭試験が実施されることが大綱でも明示されており、この内容は大変重要になる。業務経歴、特に「業務内容の詳細」は、技術的体験について試験官にアピールできるような表現で作成する必要がある。今のうちから自分の業務経歴を整理しておき、「技術士にふさわしい」技術的体験の骨子を作成しておく。
  2. 必須科目:従来の記述式問題から択一式問題になったため、あやふやな知識では高得点を得ることは困難になる。出題範囲や出題内容については、25年度試験問題および過去に出題されていた平成13〜18年度までの技術士第二次試験の択一式問題がヒントになる。これらの過去問題を十分学習するほか、25年度問題を分析して、過去問題と同じ出題がされている内容、新しく出題されている内容を理解し26年度の出題を予測する。
  3. 選択科目:従来の「選択科目に関する専門知識及び応用能力」についての問題は、「専門知識」を問う問題と、「応用能力」を問う問題の2種類に分けて出題された。25年度問題を参考にその出題形式を認識し、過年度問題の出題傾向や最近のキーワードに留意し、出題されやすいと思われる項目をピックアップして整理しておく。新設の「選択科目に関する課題解決能力」についての問題は、選択科目の分野全体に関わる、普遍的な課題と最近の重要な技術動向の両方についての出題が考えられる。また、従来の必須科目が「技術部門全般にわたる論理的考察力と課題解決能力」についての問題であったことから、問いかけの形式や答案の構成の仕方などを、過去の必須科目の問題や解答例を利用して学習することも役立つ。
新試験の内容がヴェールを脱いだといっても、試験内容が簡単になったわけではありません。特に、記述式の選択科目問題は、多くの受験者が対応に苦慮するでしょう。
新しい試験内容をよく理解し、ブレのない学習を継続して行い、自身の実力を着実にアップしていくのが、対策の基本です。
また、単に受験勉強という狭い枠だけにとらわれず、普段の業務を行ったり、毎日のニュースを聞いたりしているときに「自分が技術士であるならどう考えるだろう?」と、広く深い視点から物事を見ようとすることも、「応用能力」や「課題解決能力」を身につけるために大事なことです。
試験改正の2年目がチャンスです。本誌を参考に、試験攻略のためのポイントやツールを見つけて、平成26年度の技術士試験合格を目指してください。

平成22〜24年度 技術士第二次試験部門別結果
  22年度 23年度 24年度
 受験者数  合格者数  合格率  受験者数  合格者数  合格率  受験者数  合格者数  合格率
 機械 976 229 23.50% 983 230 23.40% 898 210 23.40%
 船舶・海洋 10 3 30.00% 6 1 16.70% 10 2 20.00%
 航空・宇宙 30 6 20.00% 27 4 14.80% 24 5 20.80%
 電気電子 1,472 213 14.50% 1,457 228 15.60% 1,260 193 15.30%
 化学 147 31 21.10% 126 28 22.20% 118 29 24.60%
 繊維 27 6 22.20% 34 10 29.40% 33 6 18.20%
 金属 132 40 30.30% 121 33 27.30% 114 25 21.90%
 資源工学 29 7 24.10% 32 7 21.90% 23 6 26.10%
 建設 15,304 1,927 12.60% 14,352 1,798 12.50% 13,432 1,748 13.00%
 上下水道 1,714 330 19.30% 1,671 257 15.40% 1,526 246 16.10%
 衛生工学 628 78 12.40% 658 90 13.70% 580 92 15.90%
 農業 878 189 21.50% 792 173 21.80% 719 164 22.80%
 森林 271 63 23.20% 291 62 21.30% 261 53 20.30%
 水産 136 30 22.10% 139 24 17.30% 134 29 21.60%
 経営工学 156 38 24.40% 145 38 26.20% 150 37 24.70%
 情報工学 618 63 10.20% 564 58 10.30% 509 69 13.60%
 応用理学 777 150 19.30% 713 127 17.80% 637 104 16.30%
 生物工学 78 15 19.20% 75 20 26.70% 50 19 38.00%
 環境 745 121 16.20% 656 99 15.10% 599 88 14.70%
 原子力・放射線 164 38 23.20% 125 23 18.40% 117 19 16.20%
 (20部門合計) 24,292 3,577 14.70% 22,967 3,310 14.40% 21,194 3,144 14.80%
 総合技術監理 3,570 540 15.10% 3,719 518 13.90% 3,654 265 7.30%
 全21部門合計 27,862 4,117 14.80% 26,686 3,828 14.30% 24,848 3,409 13.70%



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