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2004.03【特集記事−本誌編集部より−】
ISO認定機関・審査登録機関・審査員養成機関の
情報公開と倫理規定及び要員認証問題


 
ISOについての見直しが騒しい中で、認定機関と審査登録機関の情報公開の動きが急 速化している。また併行して各機関での倫理行動規定を強化する動きが表面化してき ている。更に要員認証問題が浮上。


 この背景には、ISO審査員の質の低下、経済産業省からの「負のスパイラル」の指摘、JABのIAFでのポジショニング等があり、JAB自身だけでなく、審査登録機関や審査員研修機関も大きく影響を受けそうである。
 情報公開に関しては、
  1. 日本工業標準調査会適合性評価部会 管理システム規格適合性評価専門委員会 (平成14年6月設置、以下MSS専門委員会)の報告に基づき、「審査登録機関情報公 開Ad-hocグループ会議」を設け、第三者審査登録制度における情報公開のあり方について検討し始めている。
その活動実績は、下記のとおり。
  • 1回目(07/17/03):MSS専門委員会で報告された情報公開の必要性について議論し、情報公開についての基本的合意を得た。
  • 2回目(08/28/03):「負のスパイラル」を防止するための第三者審査登録制度における情報公開の全般的なあり方について議論をした。
  • 3回目(10/08/03):具体的な情報公開項目案のリスト化に着手した。
  • 4回目(11/20/03):MSS専門委員会報告書で討議された情報公開の意義・目的を再確認した。さらに、審査登録機関の主要プロセスごとに公開項目案を設定することにし、個別の項目毎に検討を開始した。
  • 5回目(01/27/04):情報公開項目案の最終案をまとめ、さらに情報公開制度の運用等について議論した。また、成果をMSS専門委員会に報告するものとした。認定機関及び審査登録機関の情報公開案がまとめられた。(次頁)
 このAd-hocグループでは、情報公開の目的として、「経済のグローバル化に伴う「世界最適調達」への流れ、規制緩和の受け皿としての企業の自己責任に裏打ちされた「自己確認・自主保安」への流れ、地球環境問題の深刻化に伴う企業の環境対応への期待を背景に、第三者審査登録制度の社会的な重要性が増している。このような第三者審査登録制度の社会的責任を全うしつつ、自由な認証ビジネスを促進するためには、適切な情報の公表・公開により、制度そのものの信頼性、透明性、公平性を維持し、それらの情報に基づく顧客側からの選択の自由が確保される事が肝要である。

 具体的には、以下の事項を目的とする。
  1. 第三者審査登録制度に関わる情報公開を通じて、制度の公平性の担保と市場原理を促進することにより、懸念されている「コンサルタントと審査の迎合」・「低品質審査への疑問と妥協、信頼感の喪失」・「形式的審査」などによる調達組織・受審組織または社会からの信頼喪失と第三者審査制度の『負のスパイラル』への移行を抑止すること。
  2. 審査員に関わる情報公開を通じて、1)組織側の選択の自由を確保し、2)そのことにより審査員の質の向上の促進を図ること。
  3. 審査登録機関に関わる情報公開を通じて、受審組織側からの審査登録機関の選択の自由を確保すること。
  4. 認定機関に関わる情報公開を通じて、認定制度の中核組織として認定した審査登録機関情報、認定審査の公平性を担保する説明責任を果たすこと。
  5. 調達側への情報公開を通じて、調達側が、審査を一律に捉えるのではなく、審査登録機関、認定機関などからの提供情報を基に、供給組織が提示する第三者審査機関の登録証明を自らの責任で適切であるか確認する自由を確保すること。」
 運用面の課題として、
  1. 審査登録機関の選択は、受審組織の自己責任である。受審組織が審査登録機関の選択に公開情報を利用する場合、これらの情報は、あくまで一次選別に使用されるべきものである。公開情報を越える情報は、受審組織が自ら収集し、適切な審査登録機関を自らの責任において選択することが望ましいことを周知することが必要である。
  2. この制度がより広く活用されるためには、公開情報の具体的な利用法を作成することが望ましい。特に、受審組織は、その経営システムの成熟度により求める情報が異なる場合があり、適切な利用法を具体的に例示する必要がある。
  3. 情報公開が健全に機能しているか判断を行うため、情報公開の運用のプロセスにおいてKPI (Key Performance Indicator) を定め、定期的にその適切性をモニターする必要がある。例えば、情報公開に関わるクレーム等をKPIとすることが考えられる。モニターの結果、情報公開が計画通りに機能していない場合、公開項目・運用方法の見直しの必要性の検討を行う必要がある。
  4. 公開にあたりインターネットを十分に活用することが望ましい。例えば、JABのホームページと審査登録機関のホームページの該当ページをリンクすることで、1)使いやすく、わかりやすくし、2)情報公開に関わる審査登録機関・受審組織および調達組織の負担を少しでも軽減することが可能となる。
  5. ISO 17011・17021の制定動向を見ながら、ガイダンスに盛り込むようIAFへ働きかけても良い。」
となっている。

 これらを受けて、JACBでは規約見直し委員会や行動倫理調査委員会、苦情・クレーム対応委員会が検討を始めており、審査員の倫理行動規範も強化されている。
我々JATAでも、適合性評価委員会報告書に関するアクションプログラムを作成して、具体的な内容と問題点をまとめつつあるところである。JABもISO 10019を参考情報としてQMSコンサルタントの評価登録、及び登録情報公開の可能性について検討することになっている。

 これと併行して、ISO/IEC 17024(要員認証)のJIS化が行われ、JABは、現在行っている審査員研修コースの登録は、IAFの決議に対応して審査員評価登録機関(JRCA、CEAR)に移管する方向で検討することになっている。しかし、JABと我々JATA(審査員研修機関)との情報交換は「梨のつぶて」状態。これは近い将来問題を残すことになりそうである。(要員認証機関が実施するテストについてもJATAのテストとの関連が全然あいまいなまますすめられているというひどい状態にある。)
 世界の中で、恥ずかしくない審査員がムダのない適確な審査を行うための改革案が、別の要因で流産することのないように切に願うところである。

認定機関及び審査登録機関における情報公開項目>


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