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2001.02【特集記事−本誌編集部より−】
ISO 9000:2000年版にどう対応するか! (2)
──品質マネジメントシステム12の基本──

 
阪本三郎 氏
阪本技術士事務所所長,茨城県技術士会会長
ISO 9000品質システム審査員(JAB,IRCA)
(社)日本技術士会PJT環境
マネジメントセンター会長,環境審査員
国際環境アドバイザー

白石正彦 氏
白石技術士事務所所長
技術士・化学部門

吉田秀夫 氏
NECファクトリエンジニアリング
ISO支援部担当マネージャー
技術士・情報工学・IQA/IRCA
Provisional TicklT Auditor (A007197)
JAB主任審査員 (A0234)
当連載は、「ISO 9000審査登録事業所のための2000年改正:社内規定新規追加変更事例集」(改定新版)より。具体事例は2000年正式版に対応しています。



(前号続き)

2.改正規格での品質マネジメントシステム12の基本

 品質マネジメントシステムは、品質目標を達成するために顧客満足、顧客要求事項への適合性、製品・サービスの不適合の予防及び継続的改善などの適合度の向上をはからなければならない。
そのための「品質マネジメントシステム12の基本」について以下に述べる。

(1) 論理的根拠
  1. 品質マネジメントシステムに関する改正規格ISO 9000ファミリー規格は企業(組織)が製品を提供し顧客満足の目標を達成するために支援する規格である。

  2. 企業(組織)は、常に変化する顧客のニーズと期待を満足する特性をもつ製品(顧客要求事項)を提供続けるため、常にプロセスを継続的に改善することが求められる。
    1. 企業(組織)は、改正規格の品質マネジメントシステム・アプローチにより、顧客要求事項を分析し、顧客にとって受け入れ可能な製品を提供するプロセスを定め、これらのプロセスを管理し、顧客満足を得るまで続けることができる。

  3. 品質マネジメントシステムは、顧客およびその他の利害関係者の満足を達成する可能性を高めるための、継続的改善の枠組みを提供する。
    1. この枠組みによって、企業(組織)は、一貫して顧客要求事項を満たす製品を供給することができるという信頼感を、顧客と企業(組織)に与えることができる。

(2) 品質マネジメントシステム要求事項と製品要求事項との違い
  1. 品質マネジメントシステム要求事項
    1. 規定されている品質マネジメントシステム要求事項は提供製品の区分によらず、どのような産業分野または経済分野の組織に適用できる。
    2. 製品自体の要求事項は設定していない。

  2. 製品要求事項
    1. 製品要求事項は、法令に規定されたものまたは顧客要求事項から組織が規定する。
    2. 関連プロセスの製品要求事項としては、技術仕様、製品規格、プロセス規格、契約書及び規則・法令要求事項等がある。

(3) 品質マネジメントシステムアプローチ

品質マネジメントシステムを開発及び実行するためのアプローチには、次のステップからなる。この品質マネジメントシステムアプローチは、企業(組織)の能力及び製品の信頼性に対する信頼感を生み出す継続的改善の基礎を提供する。この継続的改善によって顧客満足度の増大と顧客と企業(組織)双方の成功をもたらすことにつながる。 なお、現行の品質マネジメントシステムの維持及び改善にもこの品質マネジメントシステムアプローチを適用できる。
  1. 顧客ニーズと期待の決定
  2. 企業(組織)の品質方針及び品質目標の設定
  3. 品質目標の達成に必要なプロセス及び責任者の決定
  4. 品質目標の達成に向けて各プロセスの有効性を測定する方法の確立
  5. 各プロセスの有効性を判定するための指標の適用
  6. 不適合予防と原因除去するための手段の決定
  7. プロセスの有効性及び効率を改善する機会探索
  8. 最適な結果が得られる改善策の決定と優先順位付け
  9. 明確にされた改善策を実施するための戦略、プロセス及び経営資源の計画(品質計画)
  10. 品質計画の実行
  11. 改善効果のモニタリング
  12. 期待された成果と結果の比較評価
  13. 適切なフォローアップ活動の決定と改善活動のレビュー

(4) プロセス・アプローチ
  1. “プロセス・アプローチ”とは、組織活動の中で、下記の示すプロセス及びそのプロセス間の相互作用を系統的に明確にして組織活動の付加価値をつけるための計画と実行をベースとした運営管理することを言う。
    1. 一つのプロセスは、経営資源を用いてインプットをアウトプットに変換する活動のシステムである。
    2. あるプロセスのインプットは、他のプロセスからのアウトプットになる。
    3. 繋がりを持つ多数のプロセスからなる。

(5) 品質方針、目標設定の目的と便益
  1. 目的
    1. 品質方針及び品質目標は、組織の方向付けのために焦点を提供する。
    2. 品質方針及び品質目標としての具体的な成果を達成するため経営資源の適用を支援する。
    3. 品質方針は、品質目標を設定し、レビューを行うための枠組みを提供する。
    4. 品質目標は、品質方針及び継続的改善についてのコミットメントの一貫性が必要である。
    5. 品質目標の達成が測定可能であること。

  2. 便益
    1. 品質目標の達成は、製品品質、オペレーションの有効性、財務実績に良い影響を与えることができる。
    2. その結果、顧客及び利害関係者の満足及び信頼感にも良い影響を与えることができる。

(6) トップマネジメントの役割

トップマネジメントは、品質マネジメントの原則を基礎として利用し、リーダシップ及び行動を通じ、人々が十分に参画して品質マネジメントシステムが効果的に運営する環境を創り出すことができる。
トップマネジメントの役割を以下に示す。
  1. 品質方針及び品質目標を設定する。
  2. 顧客要求事項に焦点を当てることを確実にする。
  3. 顧客要求事項を満たし、品質目標が達成するために適切なプロセスを実行することを確実にする。
  4. 品質目標を達成するために効果的な品質マネジメントシステムが確立され、実行され、維持されることを確実にする。
  5. 必要な経営資源を使えることを確実にする。
  6. 達成された結果を一連の品質目標と比較する。
  7. 品質方針及び品質目標に関する活動を決定する。
  8. 改善活動を決定する。

(7) 文書化

文書化は、品質マネジメントシステム内の必要な要素で、組織活動の意図及び一貫性を伝達して組織の価値を付加する活動である。文書化は次の事項に役に立つ。
  1. 文書化の価値
    1. 製品品質の達成及び品質改善
    2. 教育訓練の実施
    3. 確実な再現性及びトレーサビリティ
    4. 客観的な証拠の提供
    5. システムの有効性の評価

  2. 文書の種類
    必要とする文書の範囲及び媒体の決定は、組織の種類及び規模、プロセスの複雑さ及び相互作用、製品の複雑さ、顧客要求事項の重要性、適用される規則・法令要求事項、実証された要員の能力、品質マネジメントシステム要求事項の達成を実証する必要性の程度などの要因で決まる。以下に、品質マネジメントシステムに必要な文書の種類を示す。
    1. 品質マニュアルは、品質マネジメントシステムの一貫した情報を内外に提供する文書
    2. 品質計画書は、品質マネジメントシステムの特定製品、プロジェクトまたは契約にどのように適用されるかを記述した文書
    3. 手順書は、活動を実行する方法について一貫した情報を提供する文書
    4. 記録は、実行された活動または達成された結果の客観的な証拠を提供する文書

(8) 品質マネジメントのシステムの評価
  1. 一般
    品質マネジメントシステム活動評価には、適用範囲として監査、レビュー及び自己評価を含む。
    品質マネジメントシステムを評価する際には、評価対象プロセスに以下に示す4つの基本的質問と質問の回答をまとめ評価結果を決定することができる。
    1. プロセスは明確にされ、適切に記述されているか?
    2. 責任は割り当てられているか?
    3. 手順は実行され、維持されているか?
    4. プロセスは要求された結果を生むのに効果的か?

  2. 監査
    1. 監査の目的
      品質マネジメントシステム要求事項への適合性評価並びに品質要求事項及び品質目標を満たす際の有効性の評価に用いる。

    2. 監査結果
      改善機会を明らかにするために用いる。

    (以下次号)



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