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2000.04【特集記事−本誌編集部より−】
品質保証(QA)部長のエムパワーメント

関根 憲一(付加価値経営研究所所長)

 
QA部長が社内戦略をもたないと部下は肩身の狭い思いをする。
  • QA部は新商品の設計品質の評価を通じて出荷停止権を持つ。
  • QA部は納入品質の評価を通じて納入停止権を持つ。
  • QA部はまず不良を外に「出さない」しくみをつくり、実績を上げる。
  • QA部は3ないQA方式を確率し、設計改善に取り組む。
  • QA部は品質を中心として、付加価値経営にのり出す。

1.QA部長として必要な眼力

私はQA部長として4つの眼力が必要と思う。
  1. 第1は動作のムダとりの目。たとえば、クレームのボンミスの原因であるチョイオキを発見する目である。現場診断時作業者の動作のムダを発見する。モーションマインドがいる。そうしないと、ボンミスの原因が発見できないからだ。

  2. 第2は方法のムダとりの目。組立品の部品のつけ忘れの原因である。組立方法として何回も反転する組立法がある。そうすると、どこかで部品のつけ忘れが発生する。このような場合、一方向組立にできないか、方法の改善の発想の目が必要になってくる。メソッドエンジニアの目がいる。いわゆるIEの目である。
  3. 第3は工程順(プロセス)のムダとりの目。たとえばプロセスとして前段取り、併行作業分業化、検査の組み入れなどのプロセスを順序よく決定するやり方である。QCのことをProcess Controlというが、プロセスエンジニアとして目がないとプロセスの改善はできない。

  4. 第4は戦略上のムダとりの目である。たとえば、手段が目的になるムダである。たえず目的は何か、と反問し、当面の目的のむこう側に本当の大目的があるように、本質的なものをつかむ目がいる。これをポリチックという。会社の上位になればなる程、このポリチックの目が必要になってくる、D賞、ISOもそうであるが、取得が目的になると戦略上のムダが発生する。要注意である。QAも同様である。QAの大目的は、品質を中心とした金もうけにある。以上の4つのムダとりの目からQA部のあり方を考えると、スタッフ業務70、ライン業務30位の配合がよい。ライン業務とは
    1. 設計品質の評価制度を実施し、出荷停止権をもつことである。
    2. 製造品質についても同様である。
    3. 受入検査の実績評価からワースト10をえらび、工程診断(物のつくり方評価)をする。ひどいところは納入停止権を申請する。
以上のライン業務をもつことが社内のQA戦略上必要なのである。

【腕試しコーナー3】 −A社のQAから見た収益改善策−

A社のQA部長は、4つの眼力の持主であった。それを知ったA社のA社長は、或る日、QA部長にむかって、「会社の収益がよくない、QAから見た会社の収益改善政策を立案してほしい」
そこで、QA部長は、Q、C、D、Sと4つにわけ部門別に問題点を整理し、QA案として表1 A社の収益改善策を提出、A社長に説明した。

QAからみたA社の収益改善策

1)営業部門(S)
No. 問題点 原因 対策
1. 1.受注目標の未達成 1.N地区攻撃力不足(担当に)
2.定期訪問不足
○○作戦開始
事業部長の陣頭指揮
2. 2.実受注生産方式への協力度不足 1.現方式でよいの認識
2.計画生産
3.MRP
1.受注票の発行
2.製番中心のQ.C.D管理
実受注生産完全移行
3. 3.Userの設計者の氏名、趣味たんじょう日の未調査 1.User card(ACTION)の不備 1.購買、設計窓口、決定者の調査 User cardの充実
4. 4.在庫増大 計画生産 1.実受注生産へ
5. 5.コストダウン要求対策 20%要求 1.10名以下におさえる
6. クレーム・コンプレイントの把握不充分 その都度苦情処理 QA部にてUser別整理

2)生産計画部門(D)
No. 問題点 原因 対策
1. 1.実受注生産方式のPR不足 1.計画生産のマイナス認識不
2.実受注生産方式の営業へのPR不足
1.在庫をもたない生産システムを自分で工夫してみる
2.伝票と現物とのペアーシステムの考え方PR徹底
2. 1.原材料副資材の在庫増大 1.FW、NW OP点未定
2.現状の実態把握力不足
1.FW設定 2ビン方式準備
2.A、B、C管
3.材と製品倉庫を1個所に集中させる
4.臨時棚卸しをして場所在庫に正確に把握する
3. 3.正確な棚卸しおよび在庫量把握不充分 在庫の責任は自動倉庫にありと考える

3)資材・購買部門(C)
No. 問題点 原因 対策
1. 原材料、副資材、外注先別在庫管理不充分 1.外注先の在庫管理は信用できると判断 1.材料、副資材の無償、有償方式管理(不良率を加味)へ移行
2. 見積りをとる購買方式 2社見積り方式 1.見積りをとらない購買、単価決定方式2.コストグラフ法導入
3. 原材料のCD不充分(S=20%の場合、いくらCDを要求すればいよいか) 輸入品につきCDはムリと考える 97年度のCD協力依頼の手紙を出す

4)製造部門(Q)
No. 問題点 原因 対策
1. 減産にともなう余剰人員処理 1.実受注生産方式 117→105名 1.週間単位に機械を停止
2.ライン別適正人員設定、実施

2.不良(約10%) 1.キズ不良は取扱い不良
2.ガラス破損落下
1.赤箱対策の維持能力up
2.共用CARRIER方式に改良。(前だし前入れ法)
3.留め方式改良

3.段取り改善力、STOP 多忙(報告、会議)への逃避 2日/月即実践日を設けて、改善促進

4.チョコ停改善不充分 チョコテイ(3分以内の機械停止) 1.チョコテイの実態把握(MTBF、平均故障間隔)

5.研磨工程精度アップ 1.新人訓練不足
2.外人採用
1.ビデオによる標準作業組合せ案
2.訓練コーナー設置

5)技術部門(Q)
No. 問題点 原因 対策
1. CARRIERの段取りロス 機種ごとに専用にCARRIERをつくる習慣 1.Size(寸法)を3GROUPに分類する
2.Powerを3〜5。
3.真空度3〜5GROUPにわけた。
4.3×3×3=27の層での最適加工条件設定、標準化する。
5.S1、S2、S3の共用CARRIERを開発する。
2. 他品種(ITEM)の製造規格発行 乱発 推奨仕様書で標準化
3. 開発期間が長い 量産機を使用した開発 1.段取り1/2
2.共用キャリアー

6)QA部門(Q)
No. 問題点 原因 対策
1. 1.設計品質(DR1)の評価制度の未確立 1.QA幹部の勉強不足 1.User(設計者)の立場でDR1の実施例をつくる
2.設計品質のよしあしテスト
2. 2.クレームの実態把握不充分、再発防止不充分 1.Conpaintの実態調査不充分
2.良→不良 α
不良→良 β
1.VAチームを組織化訪問の実施TN
2.クレーム処理票の発行(再発防止表)
3.検査品精度向上
3. 1.不良を 「出さない」 「入れない」 「つくらない」しくみ未完 1.減産にともなう意欲減退
2.改善力の減退
1.複式管理図
2.赤箱対策の(メカニズム)推進。
3.工場長による定時ACTION


2.QA部長としての即実績をあげる方策

下策、中策、上策に分けて3大策を提案する。

下策1.クレーム処理の迅速化プロセス
  2.不良を外に「出さない」しくみづくり
  3.不良を「つくらない」しくみとしての赤箱対策
中策1.不良を外から「入れない」しくみづくり。
    場合により出荷停止権をもつ。
  2.クレームを主体とした簡易設計品質評価の実施。
    場合により出荷停止権をもつ。
  3.重複検査項目のムダとり。
上策1.新商品開発時の設計品質(機能の評価)。
    競合他社との相対点数比較(DRI)の実施。
  2.ブラックボックス工程の不良対策プロセスの普及。
    (L18を主体として田口の最適条件設定法)
  3.新商品開発時の短期開発法(L18)
  4.全社品質保証管理規定の作成、公布
  1)工場に対しての出荷停止権
  2)協力工場に対しての納入停止権
  3)設計に対しての出荷停止権
である。
以上は、「CD-ROM版・品質保証(QA)部のムダとりマニアル」から引用いたしました。


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