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2000.01【特集記事−本誌編集部より−】
DIS発表!! ISO9000・2000年改正のポイントはこれだ


 
12月初め、ISO 9000の2000年改正版DIS(英文)が、我々の前に現れました。我々はさっそく、ISO 9001/DIS 2000をCD2と比較しながら確認してみました。内容はほぼ予想どおりのものでしたが、要求項目の編成や用語の定義等での変更点もありました。
まず構成からみてみましょう。以下のような項目になっております。
Contents
Foreword(まえがき)
0 Introduction(序文)
 0.1 General(一般)
 0.2 Process approach(プロセスアプローチ)
 0.3 Relationship with ISO 9004(ISO 9004との関係)
 0.4 Compatibility with other management systems(他のマネジメントシステムとの両立性)
1 Scope(適用範囲)
 1.1 General(一般)
 1.2 Permissible exclusions(適用除外の許可)
2 Normative reference(引用規格)
3 Terms and definitions(用語及び定義)
4 Quality management system(品質マネジメントシステム要求事項)
 4.1 General requirements(一般要求事項)
 4.2 General documentation requirements(文書化についての一般要求事項)
5 Management responsibility(経営者の責任)
 5.1 Management commitment(経営者の責務)
 5.2 Customer focus(顧客の焦点)
 5.3 Quality policy(品質方針)
 5.4 Planning(計画)
 5.5 Administration(運営管理)
 5.6 Management review(マネジメントレビュー)
6 Resource management(経営資産の管理)
 6.1 Resource management(経営資源の管理)
 6.2 Human resources(人的資源)
 6.3 Facilities(設備)
 6.4 Work environment(作業環境)
7 Product realization(製品の実現化)
 7.1 Planning of realization processes(実現化のプロセス計画)
 7.2 Customer-related processes(顧客に関連するプロセス)
 7.3 Design and/or development(設計及び又は開発)
 7.4 Purchasing(購買)
 7.5 Production and service operations(生産及び監視装置の管理)
 7.6 Control of measuring and monitoring devices(測定及び監視装置の管理)

8 Measurement, analysis and improvement(測定、分析及び改善)
 8.1 Planning(計画)
 8.2 Measurement and monitoring(測定及び監視)
 8.3 Control of nonconformity(不適合の管理)
 8.4 Analysis of data(データの分析)
 8.5 Improvement(改善)
Annex A (informative) Correspondence between ISO/DIS 9001:2000 and ISO 14001:1996.
Annex A (informative) Correspondence between ISO/DIS 9001:2000 and ISO 9001:1994.

 となっています。
 これをCD2と比較しますと

FOREWORD(まえがき)
0 INTRODUCTION(序文)
 0.1 General(一般)
 0.2 Process Model(プロセスモデル)
 0.3 Compatibility with Other Management Systems(他の管理システムと両立性)

1 SCOPE
 1.1 General(一般)
 1.2 Reduction in Scope(適用範囲の縮小)
2 NORMATIVE REFERENCE(引用規格)
3 TERMS AND DEFINITIONS(用語及び定義)
4 QUALITY MANAGEMENT SYSTEM REQUIRE-MENTS(品質管理システム要求事項)
5 MANAGEMENT RESPONSIBILITY(経営者の責任)
 5.1 General Requirements(一般的要求事項)
 5.2 Customer Requirements(顧客要求事項)
 5.3 Legal Requirements(法的要求事項)
 5.4 Policy(方針)
 5.5 Planning(計画立案)
 5.6 Quality Management System(品質管理システム)
 5.7 Management Review(マネジメントレビュー)
6 RESOURCE MANAGEMENT(経営資源の管理)
 6.1 General Requirements(一般的要求事項)
 6.2 Human resources(人的資源)
 6.3 Information(情報)
 6.4 Infrastructure(経営管理基盤)
 6.5 Work Environment(作業環境)
7 PRODUCT AND/OR SERVICE REALIZATION(製品及び/又はサービスの実現)
 7.1 General Requirements(一般的要求事項)
 7.2 Customer-Related Processes(顧客関連プロセス)
 7.3 Design and Development(設計及び開発)
 7.4 Purchasing(購買)
 7.5 Production and Service Operations(生産及びサービス業務)
 7.6 Control of Measuring and Monitoring Devices(測定・監視機器の管理)
8 MEASUREMENT, ANALYSIS AND INPROVE-MENT(測定、解析及び改善)
 8.1 General Requirements(一般的要求事項)
 8.2 Measurement and Monitoring(測定及び監視)
 8.3 Control of Nonconformity(不適合の管理)
 8.4 Analysis of Data Improvement(改善のためのデータ解析)
 8.5 Improvement(改善)
ANNEX A (informative)(付録(情報的))
Table A 1-Correspondence between the clauses of ISO/CD2 9001:2000 and ISO 14001:1996
表A 1-ISO/CD2 9001:2000とISO 14001:1996の対応
BIBLIOGRAPHY(参考文献)

まず大きな内容の変化はないと思われます。’94年版からみると

1.サービス業等の運営形態の異なる企業にも、適応できるように、表現の抽象度が上った。
よって、初めて取り組む企業にとっては、わけのわからないような(具体的に何からどうしていいかがわからない)表現になっているところもあります。
しかし、既得の企業にとっては問題はまずありません。 2.プロセスモデルが変更になりました。
CD2からDISではProduct部分にいっしょにあったserviceの文字がなくなりました。
3.continual improvement(継続的改善)が、キーワードとして強調されています。
4.顧客志向Customer focusが重要視され、顧客満足度(不満足度)の測定が義務づけられます。

5.2 Top management shall ensure that customer needs and expectations are determined, converted into requirements and fulfilled with the aim of achieving customer satisfaction.

とshall文で書かれています。

5.ISO 14000環境マネジメントシステムとの両立性の推進をはかること。

0.4では、他のマネジメントシステムとの両立性ということで、環境マネジメント、労働安全マネジメント、財務マネジメント等の固有の要求事項を含むものではないが、組織的に品質マネジメントシステムと関連するところでは調整又は統合する方が望ましいとしている。
内容を見てみましょう。
第4章 品質マネジメントシステム要求事項は、品質システムが品質マネジメントシステムと、マネジメントシステムに強調変更されております。
第5章 経営者の責任では、5.1がManagement commitmentとなり、commitmentという言葉は俗に言うと、命をかける、つまり真剣に取り組むという重い言葉です。

Top management shall provide evidence of it's commitment to〜

品質方針の中に継続的改善に関するコミットメントと内部コミュニケーションが追加され、5.5 Administrationが項立され、責任及び権限、管理責任者、品質マニュアル、文書管理、品質記録の管理が収納されています。また、マネジメント・レビューの詳細な仕様が規定されました。
第6章 経営資源の管理では、6.1 Provision of resourcesの b)でto adress customer satisfactionと顧客満足度の明確化を義務づけています。
第7章 製品の実現化の章は、様々な議論を呼びそうですが、これは、改めて詳細に論じる機会をもちたいと思います。
ただ a.契約内容の確認が、顧客に関連するプロセスに変わり、「顧客とのコミュニケーション」が追加されています。b.設計変更(変更管理)の要求事項が詳細になった。c.「購買データ」が「購買インフォメーション」に変更 d.「顧客支給品の管理」が「顧客の資産」と変更になり、支給されるハードだけでなく知的財産の管理も求められるようになりました。
第8章測定、分析及び改善では、「是正処置及び予防処置」は「改善」で一括されています。その中に「継続的改善の計画」の項が設けられています。また統計的手法は、その目的を明確にして、改善のための「データ分析」となっています。また、「品質システム成果の測定」が新設され、「顧客満足の測定及び監視」が明確に規定されています。

The organization shall monitor information or customer satisfaction and/or dissatisfaction as one of the measurement of performance of the quality management system. The methodologies for obtaining and using this information shall be determined.

また、Annexには、4つの比較表が付いており、ISO 9000とISO 14000との比較、ISO 9000’94年版とISO 9000・2000年改正版との比較がすぐわかるようになっています。
ISOマネジメント規格の両立性、統合性が今後の重要課題となってくる様子が目に見えるようです。 用語として、CD2から新しく追加されたものに、

4.1.20 design and development(設計・開発)
4.2.6 customer satisfaction(顧客満足)
4.2.7 customer dissatisfaction(顧客不満足)
4.3.9 software(ソフトウェア)
4.4.5 traceability(metrology)(トレーサビリティ(計量))
4.6.8 audit criteria(監査基準)
4.6.9 audit evidence(監査の証拠)
4.6.10 audit findings(監査での検出結果)
4.6.11 audit conclusions(監査の結論)
4.6.16 technical expert(技術専門家)
4.6.17 audit programme(監査プログラム)
4.6.18 auditor competence(監査員の能力)
4.6.19 qualification(audit)(資格(監査))
4.6.20 audit team competence(監査チームの能力)
4.6.21 audit scope(監査範囲)
4.8.1 measurement process(測定プロセス)
4.8.2 measurement control system(測定管理システム)
4.8.3 metrological confirmation(計量的確認)
4.8.4 measuring equipment(測定装置)
4.8.5 metrological characteristic of a measuring of a measuring equipment(測定装置の計量特性)
4.8.6 metrological requirement for measuring equipment(測定装置の計量要求事項)
4.8.7 limits of permissible error of a measuring equipment(測定装置の許容誤差限界)

などがあります。
我々のセミナー「ISO 9000・2000年改正にどう対処するか!」の講師大石直暢先生は、

●規格改正に対する受け止め方
  1. 規格は、CD→DIS→ISのステップを経て発行されるが、現在は未だDISの段階であり、F-DISまでは未だ相当の変化が予想される。
  2. しかしながら、今回は大改正と云うこともあって、通常は公開しない“WD(作業文書)”の段階から公開され、揉まれて来た。その経緯を見ると、改正に対する考え方は十分に汲み取ることが可能である。
  3. 改正は、規格の構造の変更や中味の追加はあるが、1994年版の要求事項自体が大きく修正/変更されるものは殆ど無い。従って、組織(企業)においては、この意味と意図を理解した上で、自らの品質システムの見直し/改善に反映させて行けば良い。
●品質マニュアルの改定について

1)規格のISO 9001への一本化に対する処置
  • 適用規格は、全て“ISO 9001”になるので、適用範囲の限定、テーラリングを明記することが必要である。
  • この場合、適用除外についての規定が明確になり、存在している機能を、企業の内部的事情で適用しないということが認められなくなる!
2)品質マニュアルの章/項立て
組織(企業)は、自らの品質システムを、自らの業態に合った形で文書化すれば良い訳で、従って、規格の構造が変わったからといって、品質マニュアルを作り直す必要な無い。
  • 対比表を作成し、新規格の要求事項が品質マニュアルの何処に記述されているかを示せば良い。
  • ISO/TC 176「What do I have to do ?:何をなすべきか?」より
      ・規格のレイアウトに合わせて、現行の品質マニュアルの構成を変えないように!
  • 1994年版の規格の要求事項に従って項立てをし、規格の要求事項への対応しか記述していない場合は、この機会に、自らの品質システムを理解、説明し易い形に改善するために、改正された規格を活用して、まとめ直すことを推奨する。
とおっしゃっています。
皆様は、貴社のマネジメントシステムとして着実に改善をすすめられることが最善の道と思われます。


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